喀痰吸引(かくたんきゅういん)研修
喀痰(かくたん)は医療や介護の専門用語ですので、
- 読み方
- 意味
ともに連想するのも難しいですよね。
読み方は「喀痰吸引(かくたんきゅういん)」で、意味は高齢者の喉や気管、口の中から溜まった痰(たん)を吸い取ることを言います。
「どうして痰を吸い取らないといけないの?」
と疑問に感じる方もいるかもしれませんが、高齢者は体力的に咳払いで痰を外に出せない方が増えてくるからです。
また、人工気道を用いている方も、自分で喉のあたりに溜まった痰を出すことができません。
イメージ的には、たまに歯医者に行くと思いますが、口を開いて仰向けになっていると、どんどんと喉に、唾液や痰のようなものが溜まっていきますよね。
その溜まっているものを歯科衛生士さんが吸い取ってくれますが、喀痰吸引もあのイメージと考えるとわかりやすいと思います。
喀痰吸引ができるようになる研修とは?
喀痰吸引は医療行為として定義されています。
ですから、平成24年(2012年)までは、介護職員が喀痰吸引することは法律的に認められておらず、現場では、
- 看護師
- 准看護師
のみが、その仕事を認められていました。
ですが、それですと深夜の介護施設では、常に看護師がいる状態でないと喀痰吸引ができないということになり非常に不便な状態だったのですね。
そこでようやくと現場の声が届き、2012年からは介護士でも研修を受ければ喀痰吸引が可能になったのです。
その研修が、
- 喀痰吸引研修(基本研修・実地研修)
- 実務者研修後の実地研修
ということになります。
2つの種類の研修がありますが、各介護士ごとに受けるべき研修が異なりますので、下記で解説していきたいと思います!
(1)喀痰吸引研修(基本研修・実地研修)
2番目でも解説しますが、現在では介護福祉士になる為には実務者研修の修了が必須となっているので、これから介護福祉士を目指す方は、あえて事前に喀痰吸引研修を受講する必要もないと思います。
ただし、
- 無資格のヘルパーさん
- 介護職員初任者研修を修了してるけど、実務で喀痰吸引が必要な方
- 改正前に介護福祉士となり喀痰吸引の研修を受けていない方
は、喀痰吸引研修を受講して、基本研修と実地研修を修了しないと、現場で医療行為である喀痰吸引を行うことはできません。
(2)実務者研修
実務者研修のカリキュラムの中には「医療的ケア」という内容があり、これが喀痰吸引研修の「基本研修」の内容と同じになります。
なので、実務者研修を受講した方は、喀痰吸引研修の「基本研修」は免除され、「実地研修」だけ受ければ良いことになっています。
喀痰吸引等研修のカリキュラム
研修には種類があって、
- 第1号、第2号:不特定の利用者向け
- 第3号:障がい者など特定の利用者向け
に分かれています。
第1号研修、第2号研修
基本研修
講義が50時間あります。
- 人間と社会
- 保険医療制度とチーム医療
- 安全な療養生活
- 清潔保持と感染予防
- 健康状態の把握
- 高齢者および障害児、障がい者の痰の吸引
- 経管栄養
また、演習にて「たんの吸引」を、
- 口腔5回以上
- 鼻腔5回以上
- 気管カニューレ内部5回以上
行います。
経管栄養についても、
- 胃ろうまたは腸ろう5回以上
- 経鼻経管栄養5回以上
行います。
実地研修
基本研修で習ったことを、実際に介護施設や在宅訪問の現場で行います。
たんの吸引
- 口腔10回以上
- 鼻腔20回以上
- 気管カニューレ内部20回以上
経管栄養
- 胃ろうまたは腸ろう20回以上
- 経鼻経管栄養20回以上
第3号研修
基本研修
まず講義が8時間行われます。
その後に、シュミレーターを使用した演習が1時間あります。
- 重度障がい児、障がい者等の地域生活等に関する講義
- 喀痰吸引等を必要とする方に関する講義
- 緊急時の対応および危険防止に関する講義
- 喀痰吸引の演習
実地研修
看護師の指導の元に実地研修が行われます。
喀痰吸引のスキルを活かせる職場は?
主に下記のような介護施設や訪問介護で活かすことができます。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 訪問介護
登録申請も行えます
喀痰吸引は医療行為である為、資格を有しているかどうかが問われたり、大きな問題に発展することがあります。
「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」では、喀痰吸引の実地研修を修了した方向けに、任意で登録申請を行えるようにしています。
あくまで任意ですので、きちんと研修を修了している方は、この機関に申請しなくても、これまで通り現場でのお仕事として喀痰吸引することは可能です。
喀痰吸引等事業者(特定行為事業者)の登録
上記は任意ですが、事業者としては、「登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)」として、各都道府県に申請して登録する必要があります。
登録していない場合は、スタッフが研修を修了していたとしても実務で医療行為を行うことはできません!