トイレで排泄をすることの重要性と介助方法
人がトイレで尿や便をする行為を排泄(はいせつ)といいます。
排泄行為は、赤ちゃんの時は自分の意思でコントロールできないのでオムツが必要ですよね。
ですが、小学校へ上がる前頃までには、自分で調節ができるようになり完全に動作が自立します。
通常であれば、その後数十年は排泄に関する悩みは起こりません。
ですが、高齢になってくると、またオムツが必要になるほど排泄行為が難しくなってくるのです。
高齢者となり、身体の機能低下などで、失敗をすると人はどんな気持ちになるかご存知でしょうか?
ガッカリとしてしまい、気持ちが沈んでしまいますね。
私たち介助者は、そんな利用者さんが、気持ちよく生活できるように援助してゆく必要があるのです。
トイレで排泄をする重要性について
高齢者の方にトイレでの失敗が増えてきたら、オムツを使用すれば問題解決だと思いますよね。
ですが、安易にオムツへ切り替えることは、実は人の生活に大きなマイナス要素を与えることになります。
実は、オムツ使用が生活に与える悪影響には、
- 尿や便などの汚染物、むれによって皮膚炎をおこしやすくなる
- 感染症をおこしやすくなる
- 自尊心が傷つけられる
- においや外見が気になり、趣味活動などに出かけなくなる
- 活動が減り、食欲が減退する
のような問題点があることがわかってきています。
衛生的なトラブルだけでなく、自尊心など精神的に苦痛を与えるという悪影響もあるのですね。
トイレ使用継続が生活に与えるプラス要素
それでは、オムツに切り替えず、そのままトイレを使う場合はどうなのでしょうか?
その場合は、ポジティブな効果が生まれるのです。
- 自分に自信がもてる
- 人との関わりをもつ意欲がでる
- 活動的になれる
- 食欲が増え、体力の維持ができる
などなど。
このようにトイレで排泄が続けられることで、利用者さんは自信を持って生活をおくることができます。
トイレかポータブルかオムツか?
オムツですと利用者さんが嫌がってしまうとしたら、やはりトイレを利用してもらうのが正解なのでしょうか?
ですが、
- 家の間取り
- 利用者さんの身体の状態
によっては、家のトイレで用を足すことができません。
そこで選択肢に挙がってくるのがポータブルトイレです。
ポータブルトイレというのは、オマルをもっと椅子のような形にしたもので、ベッドの側など室内に置いておくことができるものです。
しかし、ポータブルトイレを利用することも嫌がる利用者さんもおられます。
ですが、結局は上記3つの選択肢の中から、どれか最適なものを選ばなければなりません。
オムツの方が嫌のようでしたら、次点としてポータブルトイレを選ばざるを得ないこともよくあります。
(パナソニックのポータブルトイレ)
ポータブルトイレでの介助方法と注意点
ここでは、ベッドサイドに置いたポータブルトイレを利用した、一部介助と全介助の利用者さんの介助方法を紹介しています。
準備する物
- ポータブルトイレ
- 蒸しタオル
- トイレットペーパー
- シャワーボトル
- バスタオル
トイレの前
- 利用者さんに排尿や排便の有無を確認
- ポータブルトイレで介助することを説明し同意を得る
ベッドからの立ち上がり
まずは「一部介助」についてです。
- 利用者さんはベッド縁に近いほうへ座り、ベッド柵をつかむ
- 足をベッドの方へ少し引いて、お辞儀をするようにすこし前屈姿勢になってもらう
- 自力で立ち上がれる場合は、利用者さんはベッド柵を支えに立ち上がる
- フラつきがみられる場合は、介助者が身体の一部をしっかりと支える
続いて「全介助」について。
- 介助者が、利用者さんの足と背中を支え、身体をベッド上で回転させて座らせる
- 利用者さんの肩甲骨の付近を支えながら、介助者は両足で利用者さんの両膝を挟むようにして立ち上がらせる
ズボンを脱ぐ
一部介助
- 利用者さんはベッド柵につかまり、ズボンを下ろす
- 難しい場合は、介助者が手伝う
- 身体にふらつきが見られる場合は、身体を介助者が支える
全介助
- 介助者は、利用者さんの肩甲骨あたりにしっかりと手をまわし支える
- 利用者さんの身体を片手でしっかりと支えた状態で、ズボンをおろす
トイレに座る
一部介助
- 深めに便座に座る
- 身体がかたむかないように、ポータブルトイレの手すりにつかまってもらう
- 利用者さんの腰から足にかけて、バスタオルをかける
- 1人で座っていられる様子ならば、介助者は利用者さんの視界に入らない場所で待機する
全介助
- 利用者さんの身体をしっかりと支え、便座に座らせる
- ずり落ちないように、利用者さんの身体の位置を調節する
- バスタオルをかける
- 介助者は、利用者さんの身体がかたむかないように支える
排泄後
一部介助
- 介助者は排泄がおわった頃に利用者さんに声をかける
- トイレットペーパーまたは、蒸しタオルを利用者さんに渡す
- 利用者さんに、自分で拭ける所は自身で拭いてもらう
- 難しい所は、介助者が拭く
全介助
- 利用者さんに、排泄が終わったかたずねる
- 介助者は蒸しタオルで、前から陰部を拭き、最後に肛門部を拭く
- 汚れがひどい場合は、シャワーボトルに人肌のお湯を入れ、前から洗浄し、蒸しタオルで拭く
ズボンをはく
一部介助
- 利用者さんはベッド柵につかまり立ち上がる
- 脱いだときと同じ要領で、ズボンをはく
全介助
- 介助者が身体を支え立ち上がらせる
- 利用者さんの身体を片手でしっかりと支えた状態でズボンを上げる
- 立ち上がってままの状態で、動作が危険な場合はベッドにバスタオルをひいておいてそこへ利用者さんに座ってもらう
- 利用者さんがベッドに座っていられない様子ならば、介助して横になってもらう
- ベッド上でスボン着衣の介助をする
清潔保持
一部介助
- 介助者は、自分の手を洗った後、利用者さんにおしぼり渡し手を拭いてもらう
全介助
- 利用者さんの手を介助者が拭く
介助が終わったら
- 排泄物を確認し記録=尿の色、量、便の色、形態、量
- 利用者さんの体調を確認する
- 排泄物を片付ける
- ポータブルトイレを掃除し、消臭剤を入れる
- 換気をして、室内の環境を整える
トイレ介助で注意するべきこと
以下のようにまとめられます。
- 利用者さんの残存機能を活用できるよう促し、自信がもてるように介助する
- 座っているときの安全をしっかりと確保する
- プライバシーを守るように配慮する
- 自尊心を傷つけないよう言動には十分気を配る
※残存機能とは:その人に障害などがあっても、自分でまだ動かせる機能のこと
自分で用が足せなくなったからといって、すぐにオムツというわけではなく、利用者さんの体調や心理状態までくみとって、最適な介助を行っていきましょう!