食事介助と口腔ケアの基本手順
食事は生きていくために欠かせないことで利用者さんにとっての楽しみでもあり、生活の中で大事な行為です。
介護士は、利用者さんの心身状態を把握して、安全に食事と水分がとれるよう配慮し介助する必要があります。
ここでは、食事介助の基本的な手順、注意点と口腔ケアについてお話ししていきます!
食事介助の準備
食事介助で大事なことは「準備」です。
下記の流れでしっかりと事前準備を整えていきましょう。
- 体調、気分を確認し、これから食事であることを伝える
- 排尿と排便の有無を確認し、希望があればトイレ誘導、オムツ交換をすませる
- 介助者は手を洗い、利用者さんの手を洗うかおしぼりでふく
- エプロン、タオル、おしぼりを準備する
- 献立内容を利用者さんへ説明する
- 姿勢を整える
上記の食事介助の流れの中で、特に気をつけるべき点は「姿勢」です。
姿勢について
イスに座っている場合
利用者さんの足が床につくようにするのが重要です。
身体が小さく足が床にとどかない場合は、踏み台などを使用します。
ベッド上の場合
利用者さんの膝下にクッションをしき、身体が下にずれないようにベッドを背上げします。
身体状態をよく観察し食事がとりやすい角度にしてください。
理想は90度程度ですが、麻痺や拘縮がある場合は、30度〜70度程度にし食事中利用者さんが辛くならないよう配慮しましょう。
車いすに座っている場合
利用者さんの身体に合わせ、場合によってはフットレストをあげて床に足がつくようにします。
テーブルにからだを引きよせると食事がしやすくなります。
介助の手順
(1)食事直前
- 食事を始めることを利用者へ伝える
- 利用者さんの希望があれば、エプロンやタオルを当てる
- 食器の下に滑り止めマットをひく
- 吸いのみまたはコップでうがいをしてもらう
- 食事の形態(硬さ、大きさ)、温度を確認
上記でなぜ食前に「うがい」をしてもらうのか?というと、口の中を湿らせることで飲み込みやすくなるからです。
また、口の中に異物がないか確認できます。
うがいがむずかしい利用者さんの場合は、スポンジを使用することもあります。
(2)食事中
食事中は、一回の量と温度に気をつけていきましょう。
- 水分から摂取する(飲み込みがスムーズになります)
- 主菜、副菜、水分を交互に口へ運ぶ
(3)食事が終わったら
- 食事後服薬の確認
- 食事量と水分量を確認、記録する
- 口腔ケアをする
麻痺や拘縮がある利用者さんへの注意点
麻痺や拘縮の程度は、利用者によってさまざまです。
その方によって注意点が異なってきますので、その都度柔軟に対応できるようになりましょう。
- 身体が傾かないように配慮する(麻痺側にクッションを入れるなどの工夫をする)
- 麻痺のない方から介助する
- 麻痺のある側に食べ物がたまなってないか注意する
麻痺のない側から介助する理由
麻痺側は力が入りにくい状態なので、うまく飲み込めず口から食べてものが出てしまうことがあるからです。
でえが、これも利用者さんによってバラつきがあります。
人によっては、麻痺側からの方がよい場合もあります。
全介助の利用者さんへの注意点
全介助が必要な利用者さんの場合は、できるかぎりベッド上ではなく、食堂など食事の場としてふさわしい場所で介助するのが望ましいです。
ですが、利用者さんの身体状態によってベッド上で介助をすることも少なくありません。
- しっかりと目が覚めていることを確認する
- 食材ができだけ利用者さんに見えるよう配置する
- エプロンやタオルの準備する
- 口のあけ具合、咀しゃく(噛む力加減)、嚥下(飲み込み)状態に合わせて、食物形態を調節する
- 利用者さんに食べる順番を選んでもらい、次は何を口に運ぶか伝える
- ペースが早いか、遅いか聞きながら介助する
- 口腔内に食べ物がたまってないか、飲み込めているか確認しながら介助する
認知症の利用者さんへの注意点
できるかぎり同じ環境(場所、時間、食器の形態)で、食事が摂れるようにしましょう。
少しの環境の変化でも、利用者さんの混乱を招くことがあります。
- 献立内容の説明を再度する
- バランスよく摂取のできるよう声かけする(声かけするとき、強い口調にならないように注意しましょう)
- 誤飲(食物でないものを口に入れる事)がないか、しっかりと観察する
誤嚥(ごえん)の怖さ
どの利用者さんにも共通する事ですが、誤嚥には十分注意しましょう。
誤嚥とは:食べ物、水分、唾液などがうまく飲み込めず、気道に入ってしまうことで、誤嚥性肺炎の原因となります。
口腔ケアについて
口の中のことを口腔といいます。
口腔内には細菌が数千億個以上いて、食事の食べ残しがあると細菌の繁殖が増加します。
口腔ケアの目的は以下となります。
(1)病気の予防
口腔ケアを行うことによって、
- 口腔内の乾燥予防
- 歯周病
- 虫歯
- 口臭の予防
- 細菌感染の防止
が期待できます。
また、全身感染予防や誤嚥性肺炎の予防につながります。
(2)栄養摂取の手助け
適度な刺激によって、血行が促進され唾液の分泌も促されるため、
- 食欲の増進
- 栄養摂取の増加
が期待できます。
ケアの方法
準備
- ガーグルベース、歯ブラシ、スポンジ、ガーゼ、コップを準備する
- 利用者さんにこれから行うことを説明する
- 介助者は手袋を準備する
- 洗面所に移動できる場合は移動する
洗浄前
- 義歯は外す:義歯はブラシで洗浄し、専用の容器に水をはり保存もしくは、口腔ケア後利用者さんの口に装着します
- うがいをしてもらう
- 利用者さんの了承をえてから、口腔内の確認をする
介助者は食物残渣をガーゼ、スポンジを使用し取り除きます。
利用者さんの目線より低い位置から介助しましょう。
洗浄
- ブラッシングする
口の中の状態に合わせ、歯ブラシの大きさ硬さを選びます。
歯と歯肉の堺目にブラシをやさしくあて、ブラシを細かく左右に振動させます。
口腔内が傷つかないように注意し、あまり力をいれすぎないようにしましょう。
以上が食事介助と口腔ケアの基本でした。